「常連さんのことは顔も名前も覚えているのに、次に何を提案すれば喜んでもらえるのか、実はよくわかっていない」——飲食店やパーソナルジム、学習塾、エステサロンのオーナーからこんな悩みをよく聞きます。売上データはPOSレジに蓄積されているのに、「この人は次に何を欲しがるか」を数字で読み解けていないのです。
その悩みを解決するのがCTB分析です。CTB分析とは、顧客の購買履歴を「カテゴリ(Category=商品分類)」「テイスト(Taste=趣味嗜好の詳細)」「ブランド(Brand=好みのメーカーや系統)」という3つの軸で読み解き、「この顧客は次に何を買いたがっているか」を高い精度で予測するための顧客分析手法です。金額や来店頻度を見るRFM分析とは違い、CTB分析は「好みそのもの」を可視化するため、次回提案・クロスセル・スタッフの接客トークまで具体的に落とし込める点が最大の強みです。
- この記事でわかること
- CTB分析とは何か——「誰が買うか」ではなく「何を買いたがっているか」を予測する分析
- CTB分析の実行手順4ステップ——架空の居酒屋「はな家」で数値シミュレーション
- CTB分析の結果を接客・販促にどう落とし込むか——3つの活用シーン
- CTB分析・RFM分析・需要予測の使い分け早見表
- CTB分析導入ロードマップ——ゼロから始める6ヶ月計画
- 業種別に見るCTB分析の実践ポイント
- データをどこから集めるか——収集方法の比較
- CTBスコアシートの作り方——Excel1枚で始めるテンプレート例
- CTB分析導入でよくある失敗・注意点
- よくある質問
- Q. CTB分析はどのくらいの顧客データ数があれば始められますか?
- Q. Excelだけで CTB分析はできますか?専用ツールは必要ですか?
- Q. テイストやブランドの情報は、どう聞けば顧客に嫌がられませんか?
- Q. CTB分析とRFM分析は、どちらを先にやるべきですか?
- Q. CTB分析の結果は、どのくらいの頻度で更新すべきですか?
- Q. スタッフの数が少ない個人店でも運用できますか?
- Q. CTB分析をやったのに効果が出ない場合、何が原因として考えられますか?
- Q. 新規オープンでまだ顧客データがない場合はどうすればいいですか?
- Q. 複数店舗を展開している場合、CTB分析は店舗ごとに行うべきですか?
- Q. テイストやブランドの好みといった顧客情報は、どのように保存・管理すればよいですか?
- まとめ:CTB分析は「個客への提案精度」を上げるための実行ツール
- あわせて読みたい
この記事でわかること
- CTB分析(Category・Taste・Brand分析)の正確な定義と、RFM分析・需要予測との根本的な違い
- 架空の店舗データを使った、CTB分析の4ステップ実行手順と具体的な数値シミュレーション
- 飲食店・居酒屋、パーソナルジム、学習塾、エステサロンそれぞれでのCTB分析の落とし込み方
- 個人店でも使えるデータ収集手段の比較(POSレジ・会員アプリ・アンケート・接客記録)
- CTB分析導入でよくある失敗パターンと、成果につなげるための注意点
CTB分析とは何か——「誰が買うか」ではなく「何を買いたがっているか」を予測する分析
CTB分析の定義:Category・Taste・Brandの3階層構造
CTB分析は、顧客一人ひとりの購買履歴を次の3つの階層に分解して整理する分析手法です。
1階層目の「カテゴリ(Category)」は、商品やサービスの大分類・小分類のことです。飲食店であれば「肉料理か魚料理か」「アルコールかソフトドリンクか」、パーソナルジムであれば「筋力トレーニング中心かダイエット中心か」といった、比較的粗い括りの分類を指します。
2階層目の「テイスト(Taste)」は、カテゴリよりもさらに踏み込んだ「趣味嗜好の細部」です。同じ肉料理でも「濃い味付けが好きか、あっさり系が好きか」、同じダイエットメニューでも「短期集中型を好むか、長期継続型を好むか」といった、顧客の個性が色濃く出る部分になります。テイストは数値化しづらいため、接客時の会話やアンケートの自由記述から拾い上げる必要がある点が特徴です。
3階層目の「ブランド(Brand)」は、顧客が信頼している特定の作り手・提供者・系統への好みです。飲食店であれば「特定の生産者や産地のこだわり」、学習塾であれば「特定の講師や指導スタイルへの支持」がこれにあたります。ブランドへの支持が強い顧客ほどリピート率が高く、価格弾力性が低い(多少値上げしても離反しにくい)という傾向があります。
この3階層を掛け合わせることで、「この顧客は”魚料理”の”あっさり系”で”特定の生産者にこだわる”タイプだ」というように、次に何を提案すれば刺さるかを高い解像度で予測できるようになります。
なぜローカルビジネスにCTB分析が必要なのか
個人店や小規模チェーンの最大の強みは「顧客との距離の近さ」です。大手チェーンのようにビッグデータで統計的に予測するのではなく、限られた顧客数だからこそ、一人ひとりの嗜好を丁寧に読み解いて的確な提案ができるはずです。しかし実際には、多くの店舗が「常連さん=なんとなく好みを覚えている」という属人的な記憶に頼ってしまい、スタッフが変わったり店主が忙しくなったりすると、その情報が失われてしまいます。CTB分析は、この「なんとなくの記憶」を「再現性のあるデータ」に変換する仕組みです。一度データとして蓄積してしまえば、新人スタッフでも常連客の好みに合わせた提案ができるようになり、属人化を防げます。
また、ローカルビジネスは大手チェーンに比べて広告予算が限られていることがほとんどです。限られた予算で新規集客と既存顧客の育成の両方を回すには、「今いる顧客一人ひとりから、どれだけ追加の売上を引き出せるか」という視点が欠かせません。CTB分析によって顧客の嗜好を的確に把握できれば、闇雲な割引施策に頼らずとも、その顧客が本当に欲しがっているものをピンポイントで提案でき、結果として広告費をかけずに客単価やリピート率を底上げできます。これは、広告予算で規模を追う大手チェーンとは異なる、ローカルビジネスならではの戦い方だといえます。
RFM分析・デシル分析との違い——「金額軸」と「嗜好軸」
顧客分析の手法について詳しく知りたい方は、当サイトの分析手法比較の記事でデシル分析・RFM分析・CTB分析・CPM分析の4手法を横並びで解説していますが、ここではCTB分析とRFM分析・デシル分析との違いを掘り下げます。
RFM分析は「Recency(最終購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(購入金額)」という3つの”数字”で顧客をランク分けする手法です。デシル分析も購入金額という単一の数字で顧客を10等分にランク分けします。どちらも「どれだけ良い顧客か」を金額・頻度という定量軸で測る手法であり、「その顧客が何を欲しがっているか」という中身までは教えてくれません。
一方でCTB分析は、金額や頻度をいったん脇に置き、「この顧客は何を好むか」という嗜好そのものを軸にします。極端に言えば、RFM分析は「優良顧客か否か」を判定するための分析、CTB分析は「その顧客に何を勧めれば喜ばれるか」を判定するための分析です。両者は対立する手法ではなく、RFM分析で優良顧客を絞り込んだうえで、CTB分析でその顧客に最適な提案内容を組み立てる、という「併用」が最も効果を発揮します。
需要予測(Excel移動平均等)との違い——「店全体の数量」と「個客の嗜好」というデータ粒度の違い
当サイトの需要予測の解説記事では、Excelの移動平均法などを使い「来月は何個仕入れるべきか」「来週の来店客数はどのくらいか」といった、店舗全体としての数量を予測する方法を紹介しています。CTB分析はこれとは全く異なるデータ粒度を扱う分析だという点を、ここで明確にしておきます。
需要予測は「店全体・商品全体」を対象にしたマクロな数量予測です。過去の販売数の推移から季節性やトレンドを読み取り、「来月は先月より1.2倍の来店が見込まれるので、食材の仕入れ量を増やそう」といった、店舗運営全体のオペレーションに関わる意思決定に使います。
対してCTB分析は「個客単位」のミクロな嗜好予測です。「山田様は次回来店時にあっさり系の魚料理を好むだろう」「田中様はそろそろ新しいブランドのプロテインを提案しても受け入れてもらえるだろう」といった、一人ひとりへの個別提案を組み立てるために使います。両者は「予測する対象の粒度」が根本的に異なるため、「店全体の数量を読みたいなら需要予測」「一人ひとりへの提案精度を上げたいならCTB分析」というように使い分けるのが正解です。実務では、需要予測でマクロな仕入れ・シフト計画を立てつつ、CTB分析でミクロな個別提案・接客の質を上げる、という二段構えの運用が理想的です。
両者を混同してしまうと、分析の目的そのものがぶれてしまいます。例えば「来月の来店数が増えそうだから、とりあえず全顧客に同じ割引クーポンを送ろう」というのは需要予測的な発想であり、これ自体は間違いではありませんが、CTB分析の役割ではありません。CTB分析が本領を発揮するのは、「増えるとわかっている来店数の中で、どの顧客にどのメニュー・どの商品を優先的に勧めれば満足度と客単価が同時に上がるか」という、一段階踏み込んだ問いに答えるときです。マクロな需要予測とミクロなCTB分析を「対立する選択肢」ではなく「重ねて使う2つのレイヤー」として捉えることが、両方の手法を無駄なく活かすポイントです。
CTB分析の実行手順4ステップ——架空の居酒屋「はな家」で数値シミュレーション
ここからは、架空の居酒屋「はな家」(月間来店客数約600人、会員カード保有者180人)を例に、CTB分析を実際にどう進めるのかを数字付きで見ていきます。
ステップ1:カテゴリ分類——大分類・小分類で購買の土台を把握する
まず「はな家」では、過去6ヶ月分のPOSデータから会員180人分の注文履歴を抽出し、大分類(食事・アルコール・ソフトドリンク)と小分類(肉料理・魚料理・揚げ物・サラダ、日本酒・焼酎・ビール・サワー等)に振り分けます。集計の結果は次の通りでした。
肉料理をメイン注文の中心とする顧客が72人(会員全体の40%)、魚料理を中心とする顧客が54人(30%)、揚げ物・居酒屋メニュー全般をまんべんなく頼む顧客が54人(30%)という内訳になりました。アルコールでは、日本酒党が45人(25%)、ハイボール・サワー党が81人(45%)、ビール党が36人(20%)、ノンアルコール中心が18人(10%)という分布です。この時点で「肉料理×ハイボール・サワー」という組み合わせが最も大きなボリュームゾーン(推定29人=40%×45%×180人で概算)であることが見えてきます。
この段階では、比率を掛け合わせて算出した「推定人数」はあくまで目安であり、実際にはカテゴリ同士の組み合わせに偏りが生じることも珍しくありません。そのため、可能であれば単純な掛け算による概算にとどめず、実際の注文履歴から「肉料理を頼んだ人が実際にどのドリンクを一緒に注文しているか」をクロス集計で確認することをおすすめします。「はな家」でも概算では29人だったボリュームゾーンが、実際の注文履歴を突き合わせたところ26人という結果になり、大きな差ではないものの、より精度の高いセグメント設計につながりました。データ量が少ないうちは概算で構いませんが、会員数が増えてきたら実データでのクロス集計に切り替えていくと、施策の精度が安定します。
ステップ2:テイスト分析——味付けの濃淡・量・温度感などの細部を掘り下げる
次に、カテゴリだけでは見えない「テイスト」を掘り下げます。「はな家」では、レジ横に月替わりの一言アンケート(QRコード読み取り式、回答は選択式2問のみで所要10秒)を設置し、3ヶ月かけて回答を蓄積しました。その結果、肉料理を好む顧客72人のうち、濃い味付け(にんにく・甘辛だれ系)を好むと回答した人が46人(64%)、あっさり系(塩だれ・レモン系)を好むと回答した人が26人(36%)という内訳が判明しました。同様に、量については「がっつり量が多いメニュー」を好む層が58%、「品数を多く少量ずつ」を好む層が42%という結果も得られています。この2つの軸を掛け合わせると、「濃い味×がっつり量」を好む顧客が全体の約37%を占める最大セグメントであることがわかりました。
ステップ3:ブランド分析——特定の生産者・銘柄・提供スタイルへのこだわりを特定する
「はな家」では看板メニューとして地元の契約農家から仕入れる地鶏と、蔵元直送の日本酒3銘柄を扱っています。注文履歴とスタッフの接客メモを突き合わせたところ、日本酒を注文する会員45人のうち19人(42%)が「必ず同じ銘柄を指名する」というブランドロイヤルティの強い顧客であることがわかりました。この19人は来店頻度が会員平均の1.6倍、客単価も平均より840円高いという特徴があり、「ブランド指名層」として最優先で個別フォローすべきセグメントだと位置づけられました。
ブランド分析で見落とされがちなのが、「指名の強さ」にも濃淡があるという点です。「はな家」では、ブランド指名層19人をさらに細かく見ると、来店するたびに必ず同じ銘柄を頼む「絶対指名型」が11人、気分によって指名銘柄と他の銘柄を使い分ける「準指名型」が8人という違いがありました。絶対指名型に対しては当該銘柄の欠品・入荷遅延が起きた際に個別に連絡を入れるなど特に丁寧な対応が求められる一方、準指名型に対しては新しい銘柄の試飲を提案するなど、他ブランドへの興味喚起を狙った施策も打てます。「ブランドを指名しているかどうか」の二択で終わらせず、指名の強度まで見ておくことで、より柔軟な打ち手を選べるようになります。
ステップ4:施策立案——3階層の掛け合わせから具体的なアクションへ
ここまでの3ステップを掛け合わせると、「はな家」の顧客は大きく次の4セグメントに整理できます。①肉料理×濃い味×がっつり量(約26人、最大ボリューム)、②魚料理×あっさり系×少量多品(約19人)、③ブランド指名層(日本酒銘柄指名、19人、客単価が高い最優良層)、④その他・様子見層(残り116人)。この整理をもとに、「はな家」では次のような施策を実行しました。①のセグメントには来店時にスタッフから「本日のがっつり系おすすめ」を最初に提案するトークスクリプトを導入、③のセグメントには新着日本酒の入荷情報をLINE公式アカウントで個別に案内。導入から3ヶ月で、①セグメントの追加オーダー率(メイン以外の注文発生率)が31%から48%に上昇、③セグメントの月間来店頻度が1.6回から2.1回に増加という成果が出ました。このように、CTB分析は「分析して終わり」ではなく、セグメントごとに異なる具体的なアクションに落とし込んで初めて価値を生みます。
セグメント②③④への具体的な打ち手——ボリューム層以外も取りこぼさない
前述のセグメント①(肉料理×濃い味×がっつり量、約26人)とセグメント③(ブランド指名層、19人)以外にも、「はな家」では②と④のセグメントに対してそれぞれ異なる打ち手を用意しました。セグメント②(魚料理×あっさり系×少量多品、約19人)に対しては、品数を増やした「あっさり小皿5種盛り」という新メニューを開発し、専用の案内を送付。導入前の月間追加オーダー率が22%だったのに対し、案内送付後は3ヶ月間の平均で39%まで上昇しました。セグメント④(その他・様子見層、116人)は最もボリュームが大きい一方で嗜好が定まっていない層のため、無理に個別提案はせず、来店3回目のタイミングで簡単な嗜好アンケートに回答してもらうよう促す施策に絞りました。結果として、④のうち3ヶ月間で31人が新たにセグメント①〜③のいずれかに分類できるようになり、施策対象を広げることができました。このように、ボリュームが大きいセグメントと最優良のセグメントだけでなく、「まだ嗜好が定まっていない層をどう定めていくか」という視点を持つことが、CTB分析を一過性で終わらせないコツです。
CTB分析の結果を接客・販促にどう落とし込むか——3つの活用シーン
CTB分析は、セグメント分けをして終わりにしてしまうと効果が出ません。ここでは分析結果を実際の現場業務に接続するための3つの活用シーンを具体的に紹介します。
活用シーン1:店頭接客トークへの落とし込み
最も即効性が高いのが、接客時のトークスクリプトへの反映です。「はな家」の例では、レジシステムに顧客ごとの簡単なタグ(「濃い味党」「あっさり派」「新銘柄案内対象」等)を表示できるようにし、会計や案内の際にスタッフがひと目でその顧客の傾向を確認できるようにしました。新人アルバイトであっても、タグを見れば「本日のがっつり系おすすめはいかがですか」といった一言を自然に添えられるようになり、属人的だった接客のばらつきが大きく減少しました。パーソナルジムであれば、トレーナーが担当会員のカルテに「短期集中型」「長期継続型」といったタグを付けておくことで、初めて担当するトレーナーでも会員の志向に合わせたメニュー提案が即座にできるようになります。
活用シーン2:LINE公式アカウント・メルマガのセグメント配信
LINE公式アカウントやメール配信システムの多くは、顧客をタグやセグメントで絞り込んで配信できる機能を備えています。CTB分析で得たセグメントをそのままタグとして登録しておけば、全顧客への一斉配信ではなく、「濃い味×肉料理を好む顧客だけ」「特定ブランドを指名する顧客だけ」といったピンポイントな配信が可能になります。一般的に、セグメント配信は一斉配信と比べて開封率・反応率が1.5倍から2倍程度高くなる傾向があり、「はな家」でも新メニュー告知の反応率が一斉配信時の11%からセグメント配信時の23%へと倍増しました。学習塾であれば、特定の指導方針を支持する保護者層だけに新講座の案内を送る、エステサロンであれば特定の化粧品ラインの愛用者だけに新商品の先行案内を送る、といった応用が可能です。
活用シーン3:新商品・新メニュー・新サービス開発への反映
CTB分析で蓄積したテイストデータは、新しい商品やサービスの企画段階でも活用できます。「はな家」では、テイスト分析の結果「濃い味×がっつり量」が最大セグメントであることが判明したため、次の季節メニュー開発ではこの層に向けた新しい看板メニューを優先的に企画しました。パーソナルジムでは、会員の志向データを集計した結果「短期集中型」が想定より多いことがわかれば、短期集中プログラムの料金プランを新設する、といった意思決定に直結します。感覚や思いつきでメニュー・サービスを開発するのではなく、実際に蓄積された顧客の嗜好データに基づいて開発の優先順位を決められる点は、CTB分析ならではの副次的なメリットです。
CTB分析・RFM分析・需要予測の使い分け早見表
3つの分析・予測手法は目的も扱うデータの粒度も異なります。混同しやすいポイントを整理すると、次のようになります。
| 手法 | 主な問い | データの粒度 | アウトプットの使い道 | 更新頻度の目安 |
|---|---|---|---|---|
| CTB分析 | この顧客は次に何を欲しがるか | 個客単位(嗜好) | 接客トーク・個別提案・セグメント配信 | 3ヶ月〜半年に1回 |
| RFM分析・デシル分析 | この顧客はどれだけ良い顧客か | 個客単位(金額・頻度) | 優良顧客の絞り込み・ランク別施策 | 1〜3ヶ月に1回 |
| 需要予測(移動平均等) | 来月・来週はどれだけ売れるか | 店舗全体・商品全体(数量) | 仕入れ計画・シフト計画 | 毎週〜毎月 |
この表からもわかる通り、CTB分析とRFM分析はどちらも個客単位のデータを扱いますが「何を予測するか」が異なり、需要予測だけがそもそも店舗全体という異なる粒度を扱っています。3つを対立するものとして選ぶのではなく、目的に応じて併用することが、ローカルビジネスの限られたリソースを最も有効に使う道です。
CTB分析導入ロードマップ——ゼロから始める6ヶ月計画
「何から手をつければいいかわからない」という声に応えるため、データがゼロの状態から始める場合の標準的なロードマップを整理しました。
| 期間 | やること | ゴール |
|---|---|---|
| 1ヶ月目 | POSレジ・予約システムのデータからカテゴリ分類の台帳を作成 | 顧客ごとの購入カテゴリが一覧化されている状態 |
| 2〜3ヶ月目 | 会計時の一言アンケート・カウンセリングシートでテイストデータの収集を開始 | 主要顧客の半数以上にテイスト情報が付与されている状態 |
| 4ヶ月目 | ブランド指名の強い顧客を接客メモから抽出、初回のセグメント分けを実施 | 3〜4個の主要セグメントが定義されている状態 |
| 5〜6ヶ月目 | セグメント別の接客トーク・LINE配信・新メニュー案を設計し実行 | セグメントごとの反応率・追加オーダー率が計測できる状態 |
| 7ヶ月目以降 | 3ヶ月〜半年サイクルでセグメントを見直し、施策を継続的に改善 | CTB分析が定例業務として定着している状態 |
重要なのは、1ヶ月目からいきなり完璧な分析を目指さないことです。多くの個人店がCTB分析の導入に挫折する理由は、最初から全顧客・全項目を網羅しようとして息切れしてしまうからです。まずは主要な常連客20〜30人分だけでもカテゴリ・テイスト・ブランドの3項目を埋めてみることから始め、運用が回り始めてから対象を広げていくのが継続のコツです。
業種別に見るCTB分析の実践ポイント
飲食店・居酒屋:メニュー提案とドリンクペアリングへの応用
飲食店・居酒屋では、カテゴリ(メイン料理の系統)×テイスト(味の濃淡・量)×ブランド(産地・銘柄へのこだわり)の3軸が最もダイレクトに使える業態です。特に効果が高いのは「新メニュー投入時のターゲット選定」です。新しい濃い味付けの肉料理を投入する際、CTB分析で「濃い味×肉料理」セグメントに該当する顧客だけにLINEやDMで先行案内を送れば、闇雲な全体告知よりも高い反応率が見込めます。また、ドリンクとフードのペアリング提案(例:あっさり系の魚料理を好む顧客には辛口の日本酒を提案)にもCTBのテイスト情報がそのまま使えます。
具体例として、駅前の定食店「みどり食堂」(月間来店客数約900人、会員登録者210人)では、ランチタイムの回転率向上とディナータイムの客単価向上という2つの課題に対してCTB分析を使い分けました。ランチでは「がっつり系×大盛り希望」のセグメント(推定65人)に対して、注文と同時に配膳できる定番の大盛りセットを優先提案するオペレーションに変更し、提供までの平均待ち時間を4分短縮しました。ディナーでは「魚料理×日本酒指名」のセグメント(28人)に対して、季節限定の高単価コースを個別案内したところ、対象客の平均客単価が3,200円から4,150円へと29%上昇しました。このように同じ店でも時間帯によってセグメントの切り口を変えることで、より実務に即した提案ができます。
パーソナルジム:トレーニング志向とサプリメント・器具の嗜好を分ける
パーソナルジムでは、カテゴリを「筋力増強志向か、ダイエット・減量志向か、姿勢改善・リハビリ志向か」で分類し、テイストを「短期集中で追い込むタイプか、無理せず長期継続を望むタイプか」で細分化します。ブランドは、会員が信頼している特定のプロテインメーカーやトレーニング理論(特定の流派・資格制度)への支持として現れます。例えば、月会費制のジムで「短期集中×筋力増強」タイプの会員には追加のパーソナル回数券を、「長期継続×姿勢改善」タイプの会員には継続割引プランを提案する、といった具合にCTBのセグメントごとにアップセルの切り口を変えることで、無理な売り込みにならずに単価アップが図れます。
架空のパーソナルジム「フィットベース」(会員数95人)の事例では、入会時カウンセリングシートの回答から「3ヶ月以内に結果を出したい短期集中型」が38人(40%)、「半年〜1年かけてじっくり取り組みたい長期継続型」が57人(60%)という内訳でした。短期集中型のうち、特定の海外プロテインブランドを指名する会員が16人おり、この層に対して新フレーバー入荷時に優先案内を送ったところ、店販の追加購入率が45%から68%に上昇しました。一方、長期継続型には毎月の継続特典(体組成測定の無料追加回数)を訴求したところ、6ヶ月継続率が従来の71%から84%まで改善しています。トレーニングの好み(有酸素中心か無酸素中心か)というテイストも合わせて記録しておくことで、体験カウンセリング時の初回提案の的中率も上がりました。
学習塾:得意科目・学習スタイル・指導方針への支持を可視化する
学習塾では、カテゴリを「受講科目(国語・算数・英語等)」、テイストを「集団授業を好むか個別指導を好むか、暗記重視か思考力重視か」、ブランドを「特定の講師や指導メソッドへの支持」として整理します。保護者面談やアンケートで「この生徒は競争心を刺激されると伸びるタイプか、じっくり褒められて伸びるタイプか」といったテイスト情報を蓄積しておくと、進級時のクラス編成や講師のマッチング、追加講座の提案精度が大きく上がります。特に「特定の講師でないと通わせたくない」というブランド指名の強い保護者層は、退塾リスクが低い反面、講師の異動・退職時には最も丁寧なフォローが必要な層でもあるため、CTB分析で事前に洗い出しておく価値があります。
中規模の個人塾「未来ゼミ」(生徒数130人)では、面談記録をもとに「英語強化を優先したい家庭」が42世帯(32%)、「数学・理系科目を優先したい家庭」が51世帯(39%)、「総合的な学習習慣の定着を優先したい家庭」が37世帯(29%)という3セグメントに分類しました。さらにテイスト軸として「競争心を刺激されて伸びるタイプ」が58%、「じっくり褒められて伸びるタイプ」が42%という傾向も記録しました。英語強化セグメントのうち特定の外国人講師を強く支持する家庭が11世帯あり、この講師が担当するクラスの継続率は96%と、塾全体平均の88%を大きく上回りました。この結果を受け、講師の負担分散と生徒満足度維持のバランスを取るため、後継となる若手講師への段階的な引き継ぎ計画を早期に立てることができました。
エステサロン:施術メニューの好みと使用化粧品ブランドへのこだわり
エステサロンでは、カテゴリを「フェイシャル・ボディ・脱毛等の施術分類」、テイストを「リラックス重視かハード目の刺激を好むか、香りや音楽への好み」、ブランドを「特定の化粧品メーカー・化粧品ラインへのこだわり」として捉えます。カウンセリングシートに「アロマの香りは強め・弱めどちらが好みか」「刺激は強め・弱めどちらが好みか」といった選択式の項目を加えるだけで、テイストデータが自然に蓄積されていきます。ブランド軸では、特定の化粧品ラインをホームケアとして継続購入している顧客を特定できれば、そのラインの新商品発売時に優先案内することで、店販売上の安定的な底上げにつながります。
個人経営のエステサロン「サロン・ルミエール」(会員数140人)では、フェイシャル中心の顧客が88人(63%)、ボディケア中心が52人(37%)という内訳のうえで、テイスト軸として「強めの刺激を好む」顧客が41%、「リラックス重視」の顧客が59%という傾向を把握しました。さらにブランド軸では、特定の国産化粧品ラインをホームケアとして継続購入している顧客が23人おり、この層の年間の店販購入額は平均48,000円と、非該当層の平均19,000円の2.5倍に達していました。新商品発売の際にこの23人へ優先案内のDMを送付したところ、初回購入率が78%という高い反応率を記録し、店販売上の見込みが立てやすくなったといいます。
データをどこから集めるか——収集方法の比較
CTB分析の精度は、どれだけ質の高いデータを継続的に集められるかで決まります。個人店でも実践しやすいデータ収集手段を比較すると、次のようになります。
| 収集方法 | 取得できる主な情報 | 導入コスト | 継続の手間 | 向いている業種 |
|---|---|---|---|---|
| POSレジの購買履歴 | カテゴリ(何を買ったか) | 低(既存レジで対応可のことが多い) | 低(自動蓄積) | 飲食店・小売全般 |
| 会員アプリ・LINE公式のアンケート機能 | テイスト(好みの細部) | 中(ツール導入・設定が必要) | 中(定期配信の運用が必要) | 飲食店、エステサロン、ジム |
| 接客時のヒアリングメモ(紙・スプレッドシート) | テイスト・ブランド(会話から拾う定性情報) | 低(無料で始められる) | 高(スタッフの記録習慣が必須) | 学習塾、エステサロン、パーソナルジム |
| カウンセリングシート・入会時アンケート | ブランド・テイストの初期プロファイル | 低(紙またはフォームで対応可) | 低(初回のみ) | エステサロン、ジム、学習塾 |
| 店舗独自のポイント・スタンプアプリ | カテゴリ・ブランド(リピート商品の傾向) | 中〜高(システム導入費) | 低(自動蓄積) | 飲食店、小売、サロン |
重要なのは、「カテゴリ」はPOSレジ等で自動的に貯まりやすい一方、「テイスト」と「ブランド」は意識してヒアリングやアンケートを設計しないとデータが貯まらないという点です。多くの店舗がCTB分析でつまずくのは、カテゴリだけのデータで満足してしまい、最も差別化に効くテイスト・ブランドの情報を集める仕組みを作っていないケースです。
データ収集の仕組みを設計する際は、「誰が」「いつ」「どこに」記録するのかを具体的に決めておくことが継続の鍵になります。例えば「会計を担当したスタッフが、レジ締め後にその日の気づきを専用のスプレッドシートに1行だけ入力する」という具合に、担当者・タイミング・入力先の3点を明確にしておけば、忙しい営業時間中でも無理なく運用できます。逆に、「気づいた人がメモしておく」という曖昧なルールにしてしまうと、結局誰も記録せず、数ヶ月後にデータがほとんど蓄積されていないという事態に陥りがちです。飲食店であれば1日の営業終了後の5分間、エステサロンやジムであれば施術・トレーニング後の申し送りのタイミングなど、既存の業務フローの中に記録のタイミングを組み込むことが、データ収集を仕組みとして根付かせる最大のコツです。
CTBスコアシートの作り方——Excel1枚で始めるテンプレート例
CTB分析を始める際、最初から高機能なツールを揃える必要はありません。Excelやスプレッドシート1枚で作れる「CTBスコアシート」があれば十分に運用を開始できます。顧客名(またはID)を縦軸に、カテゴリ・テイスト・ブランドの3項目を横軸に並べ、それぞれの列に該当する分類を記入していくだけのシンプルな台帳です。実際のイメージは次の通りです。
| 顧客ID | カテゴリ(主に頼むもの) | テイスト(味・量の好み) | ブランド(指名の有無) | 備考・接客メモ |
|---|---|---|---|---|
| 0012 | 肉料理 | 濃い味・がっつり量 | 特になし | 新メニューの先行案内対象 |
| 0034 | 魚料理 | あっさり・少量多品 | 日本酒Aブランド指名 | 優先フォロー対象(客単価高) |
| 0051 | アルコール中心 | ハイボール・サワー中心 | 特になし | 様子見層。次回来店時にアンケート依頼 |
このシートを毎月あるいは3ヶ月ごとに更新し、カテゴリ・テイスト・ブランドの組み合わせが多い顧客順に並べ替える(Excelの並べ替え・フィルタ機能で十分)だけで、どのセグメントにどれだけの顧客が属しているかが一目でわかるようになります。慣れてきたら、来店頻度や累計購入額の列を追加し、RFM分析の要素と組み合わせることで、「客単価が高く、かつ特定ブランドを指名する顧客」といった、より精度の高い絞り込みも可能になります。最初から完璧な設計を目指すのではなく、まずは主要な常連客10〜20人分だけでもこのシートを埋めてみることが、CTB分析を定着させる一番の近道です。
CTB分析導入でよくある失敗・注意点
失敗1:カテゴリ分類だけで満足してしまう
POSデータの集計だけで「肉料理が人気」「魚料理が人気」という大枠の傾向を掴んだだけで分析を終えてしまうケースが非常に多く見られます。これでは通常の売上分析と大差なく、CTB分析本来の価値である「個客への具体的な提案」にはつながりません。必ずテイスト・ブランドまで踏み込むことを意識してください。
失敗2:アンケート項目を増やしすぎて回答されなくなる
テイストデータを集めようとするあまり、10問以上の詳細なアンケートを作ってしまい、結局誰も回答しないという事態は典型的な失敗です。前述の「はな家」の事例のように、選択式で10秒以内に回答できる質問を1〜2問だけ、月替わりでローテーションさせながら継続的に集める方が、長期的にはるかに多くのデータが蓄積できます。
失敗3:セグメント数を細かくしすぎて施策が回らなくなる
カテゴリ×テイスト×ブランドを厳密に掛け合わせると、理論上は数十から数百のセグメントに分かれてしまいます。個人店・小規模チェーンの人員体制では、細かすぎるセグメントに個別対応することは現実的ではありません。最初は「最もボリュームが大きいセグメント」「客単価が最も高いセグメント」の2〜3個に絞って施策を回し、運用が定着してから徐々に細分化していくのが現実的な進め方です。
失敗4:分析結果を一部のスタッフしか把握していない
店主やマネージャーだけがCTB分析の結果を把握していて、現場のアルバイトスタッフには共有されていないケースもよくある失敗です。せっかく「濃い味×肉料理を好む常連客」だとわかっていても、接客するスタッフがそれを知らなければ提案にはつながりません。会員カードや予約システムに簡単なタグ(例:「濃い味党」「新銘柄案内対象」)を付けておき、誰が接客しても同じ提案ができる仕組みまで作って初めて、CTB分析は現場で機能します。
失敗5:一度分析して満足し、更新のサイクルを決めていない
顧客の好みは固定的なものではなく、季節や年齢、家庭環境の変化によって少しずつ移り変わっていきます。CTB分析を一度実施しただけで「うちの顧客はこういうタイプだ」と決めつけてしまい、その後何年も更新しないでいると、実態とのズレがどんどん大きくなります。前述の導入ロードマップのように、業種ごとに適した更新サイクル(飲食店・小売なら3ヶ月、学習塾・エステサロンなら半年程度)をあらかじめカレンダーに組み込み、「見直す日」を決めておくことが、分析を形骸化させないための最も簡単な予防策です。
よくある質問
Q. CTB分析はどのくらいの顧客データ数があれば始められますか?
A. 目安として会員データ・購買履歴が50〜100件程度あれば、傾向を掴むための最初の分析は可能です。ただし、セグメントごとの傾向を統計的に信頼できる形にするには、最低でも各セグメントに10件以上のデータが集まっていることが望ましいです。データが少ない段階では、厳密な集計よりも「よく来る顧客の傾向を定性的に整理する」というところから始めて構いません。開業したばかりで会員データがほとんどない場合でも、常連になりつつある顧客数人分だけを対象にCTBの3項目を試しに埋めてみることで、分析の考え方そのものに慣れることができ、データが十分に貯まった段階でスムーズに本格運用へ移行できます。
Q. Excelだけで CTB分析はできますか?専用ツールは必要ですか?
A. 会員数が数百人規模までであれば、Excelやスプレッドシートのピボットテーブル機能で十分にCTB分析は可能です。カテゴリ・テイスト・ブランドの3列を含む顧客台帳を作り、ピボットテーブルでクロス集計するだけで、本記事で紹介したようなセグメント分けができます。会員数が数千人を超える、あるいは複数店舗のデータを統合したいという段階になって初めて、専用のCRMツールやBIツールの導入を検討すれば十分です。
Q. テイストやブランドの情報は、どう聞けば顧客に嫌がられませんか?
A. 「アンケートに答えてください」と正面から依頼するよりも、会計時や施術後の何気ない会話の延長で聞く方が自然に情報が集まります。例えば「今日の味付け、濃いめとあっさりめどちらがお好みでしたか?」といった一言を会計時に添えるだけでも、スタッフがメモを残す習慣さえあれば十分なデータになります。アンケートを使う場合も、必須ではなく任意回答にし、回答者には次回使えるちょっとした特典を用意すると回答率が上がります。
Q. CTB分析とRFM分析は、どちらを先にやるべきですか?
A. 一般的には、先にRFM分析やデシル分析で「誰が優良顧客か」という金額軸の優先順位をつけ、そのうえでCTB分析を使って優良顧客に対する具体的な提案内容を組み立てる、という順序がおすすめです。優良顧客でない層にまで丁寧なCTB分析を行うのは工数対効果が見合わないケースが多いため、まずは絞り込みにRFM分析、次に絞り込んだ層への提案precisionにCTB分析、という役割分担で考えると効率的です。
Q. CTB分析の結果は、どのくらいの頻度で更新すべきですか?
A. 業態にもよりますが、来店頻度が高い飲食店や小売業であれば3ヶ月に1回、来店頻度が低い学習塾やエステサロンであれば半年に1回程度の見直しが目安です。季節性の強い業種(アパレル的要素のある業態など)では季節の変わり目ごとに見直すとより精度が保てます。一度作って終わりではなく、顧客の好みは時間とともに変化するという前提で、定期的なアップデートを仕組み化することが重要です。
Q. スタッフの数が少ない個人店でも運用できますか?
A. むしろ個人店の方が運用しやすい面があります。大手チェーンのようにシステム化されたCRMがなくても、店主自身が顧客の顔と好みを直接把握できる規模だからこそ、簡単な顧客台帳(スプレッドシート1枚で十分)にカテゴリ・テイスト・ブランドの3項目をメモしていくだけで始められます。重要なのは高度なツールではなく、「継続してメモを残す」という運用の仕組みそのものです。
Q. CTB分析をやったのに効果が出ない場合、何が原因として考えられますか?
A. 最も多い原因は、分析結果を具体的な接客・提案の行動に変換できていないことです。セグメントを作っただけで満足し、「濃い味を好む顧客に何を提案するか」という具体策まで落とし込んでいないケースが大半です。また、分析結果が店主だけの頭の中に留まり、現場スタッフに共有されていないことも典型的な原因です。分析→具体的なトークスクリプトや提案内容への変換→現場での共有、という3段階すべてが揃って初めて成果が出ます。
Q. 新規オープンでまだ顧客データがない場合はどうすればいいですか?
A. オープン直後はデータがないのが当然なので、最初の3ヶ月は「データを集める期間」と割り切りましょう。会計時のひとことアンケートや、初回来店時の簡単なカウンセリングシートを導入から徹底しておくことで、3ヶ月後には最初のCTB分析ができるだけのデータが自然に貯まります。焦って分析しようとするより、まずは正確なデータ収集の仕組みを整えることを優先してください。
Q. 複数店舗を展開している場合、CTB分析は店舗ごとに行うべきですか?
A. 基本的には店舗ごとに行うことをおすすめします。同じ業種・同じブランドの店舗であっても、立地する商圏によって顧客の年齢層や嗜好は大きく異なることが多く、全店舗のデータをまとめて分析すると、店舗ごとの特徴が薄まってしまいます。まずは店舗単位でセグメントを作り、その後、複数店舗に共通する傾向(例えば「どの店舗でも濃い味党が4割を占める」等)を横断的に見比べることで、本部としての商品開発や販促の方向性を判断する、という2段階のアプローチが効果的です。
Q. テイストやブランドの好みといった顧客情報は、どのように保存・管理すればよいですか?
A. 氏名や連絡先といった個人を特定できる情報と、カテゴリ・テイスト・ブランドの嗜好情報は分けて管理し、アクセスできるスタッフの範囲を明確にしておくことが望ましい運用です。会員カードや予約システムに付与するタグ自体は「濃い味党」「短期集中型」といった抽象的な分類にとどめ、具体的な発言内容や個人的なエピソードを詳細にメモとして残す場合は、外部に流出しないよう保存場所(社内共有のスプレッドシートやCRMシステムなど、アクセス制限のかかる環境)を限定してください。顧客に「好みを記録させていただいてよいか」という一言を添えるだけでも、信頼関係の維持につながります。
まとめ:CTB分析は「個客への提案精度」を上げるための実行ツール
CTB分析は、カテゴリ・テイスト・ブランドという3つの階層で顧客の嗜好を可視化し、「次に何を提案すれば喜ばれるか」を高い精度で予測するための分析手法です。売上金額や来店頻度を見るRFM分析、店全体の数量を見る需要予測とは異なり、CTB分析だけが「個客単位の好みそのもの」を扱えるという点が、他の分析手法にはない独自の価値です。
重要なのは、分析を「顧客をきれいに分類すること」自体が目的にならないようにすることです。本記事で紹介した「はな家」の事例のように、セグメントごとに具体的なトークスクリプトや案内施策まで落とし込み、現場のスタッフ全員が同じ提案をできる状態まで持っていって初めて、CTB分析は成果を生みます。
飲食店・居酒屋、パーソナルジム、学習塾、エステサロンのいずれの業種であっても、CTB分析の考え方そのものは共通しています。カテゴリで大枠を掴み、テイストで細部の好みを掘り下げ、ブランドで最も忠誠度の高い顧客を見極める。この3階層の順番を守りながら、無理のない範囲でデータ収集の仕組みを業務フローに組み込んでいくことが、結果的に一番の近道になります。ツールや予算の大小にかかわらず、今日から始められる分析であるという点も、CTB分析がローカルビジネスに向いている理由のひとつです。
まずはPOSレジや会員アプリにすでにあるデータからカテゴリ分類を始め、次に会計時の一言アンケートでテイストデータを蓄積し、最後にブランド指名の強い最優良顧客層を特定する、という順番で無理なく取り組んでみてください。他の分析手法との使い分けを整理したい方は分析手法比較の記事を、店全体の仕入れ・来店数といったマクロな数量予測を学びたい方は需要予測の解説記事もあわせてご覧ください。

コメント